2018/01/15 月詠

道行きは燃える蝶だと青年に告げる老人アレハンドロは
川に沿う路線のバスが堤防を仰ぎつつゆっくり乗りあがる
店先のモッコウバラが道に出てみんな迂回をする子供たち
オールナイトをあがったあとの朝にいて開店時間を十五分待つ
生垣のそばを通ると音がしてたちまち前を飛び去る雀
雪の日の空気がつづく地下鉄を行きわたるほど風吹きぬける
アパートに集う詩人を考える 久々に電話する先輩
ほめること認めることの段差からルンバは体を傾いで降りた
目の前の家がくずれていくという地震の話 わたしの家も
なくなった花屋の後のあたらしい文房具屋でもらった栞

 


ホドロフスキーオールナイト(みなみ会館)だった
未来2018年4月号