2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

2021/05/16 月詠

退去した部屋のまくらの方角に植物園は月曜休み 糊付きの封筒があるはず 思い出しながら折るフタをまっすぐ 十四本のもみじがあっておしよせる岸辺のように帰属意識は 冬の間にしまわれていたガラス器にかれらはメロン豆花を囲む ビニ傘をさして台車を運ぶの…

2021/04/15 月詠

校庭のはしに畑とそのうえに日時計という気の長いもの 宿題を忘れたようなモスクワのとても大きな温水プール 鳴き声が引き戸のそこにいて動く回覧板がおいてある影 なくなればビルに通じる地下道も扉も出られなくなっていた 2021年未来7月号

2021/02/15 月詠

バスでしか来れない住宅街に寝て起きたのだろううぐいすが鳴く 信号に合わせて進む二車線のあいだにたぶんビニール袋 撤去日の看板によりどこからか撤去のひとが現れるもの ミャンマーの男の子からおすすめの二点透視図法のテキスト 2021年未来5月号

2021/01/13 月詠

咲いているとだけわかった花の背が思い出すたび大きくなった 美術館広場のすみで餌をやるおじさんがいて集まってくる 急に芝生に植えてある木の一本はのぼらないでと書かれてあった 2021年未来4月号

2020/12/13 月詠

同じくらい白いコートの二組が屋外展示で写真を撮った やわらかい光の自画の洋画家の留学先に雪降るという 問いながら理路整然と問いながら怒りが開くまでを涙は 朝にだけ歩いてむかうバス停の手前に薔薇があってわすれる 2021年未来3月号