2020/06/08 月詠

垂れ幕にビルの名前があるビルのここは涼しく天井がない

入ったらいちばん奥にいたひとが店員らしく確かめられる

隣席のどちらも二人組がいて教えるひとと笑ってるひと

この店は造花を窓に置いていて閉店したら片付けている

高速道路の底まで伸びた街路樹をかすめて走っていく車たち

 

2020年未来9月号

2019/10/15 月詠

左手にお盆をのせて歩くとき君は盆地に住んでいるひと

ふれるときびっくりさせないようにしてお金を払う仕組みを通る

それぞれが川に向かって窓を閉じマンションはいま嵐を前に

ニシキギにかぶさるように枝しげりかすれた札をぶらさげている

大荒れのススキは風にかたむいて根の暗がりに鴨が隠れる

このまえの晩夏の道にあった木がおぼつかなくてバスを探した


未来2020年1月号

2019/09/13 月詠「이랑ライブへ」

考えて部屋には茄子とすこしだけ体力の要るものを残した
雨雲のようにむこうが夜になる 地元の旅と思えばいいか
海だから西からずっと暮れてきて広がるまでを海に見ていた
反対のロビーの窓に光ってる観覧車 知性 欲しいのかなあ
夜の秋とてもすばやく訪れて明るいホラー映画のような


アッセンブリッジナゴヤ「イ・ランとみなとまち」
未来2019年12月号

2019/07/26 月詠「直島へ」

船に乗れば小さな船とすれちがう 二十四時間表記の通り
ナオシマプラン
noch、と少年叫ぶ井戸水は再現されたかつての家に
南寺
待つうちに信じるような暗闇の、あ、海がそっちにあるんだよなあ
初孫をあなたは遠く問いながら韓国の子とひとしきり言う
バラ園は薔薇があるから遠景の山に言われるまで気づかない

 

夏休みに瀬戸内国際芸術祭に行った。そのあと京都へ
未来2019年11月号

2019/07/16 月詠

白鳥のあいだをゆっくり抜かしてく一艘だけの手漕ぎのボート
あなたはあなたに関係なくてみんなから次第に喋りかけられている
大きめの郵便局のうえにある団地と同じ高さのこちら
21世紀ってこと知っていた? その建物で投票がある
そのあとずっと話してた、カフェ、子供が出ないように引くドア
氾濫のはなしをしてよ貝塚に田園に来たスペシャルな水

 

一瞬だけ東京にいったときに
未来2019年10月号