2021/02/15 月詠
バスでしか来れない住宅街に寝て起きたのだろううぐいすが鳴く
信号に合わせて進む二車線のあいだにたぶんビニール袋
撤去日の看板によりどこからか撤去のひとが現れるもの
ミャンマーの男の子からおすすめの二点透視図法のテキスト
2021年未来5月号
2021/01/13 月詠
咲いているとだけわかった花の背が思い出すたび大きくなった
美術館広場のすみで餌をやるおじさんがいて集まってくる
急に芝生に植えてある木の一本はのぼらないでと書かれてあった
2021年未来4月号
2020/12/13 月詠
同じくらい白いコートの二組が屋外展示で写真を撮った
やわらかい光の自画の洋画家の留学先に雪降るという
問いながら理路整然と問いながら怒りが開くまでを涙は
朝にだけ歩いてむかうバス停の手前に薔薇があってわすれる
2021年未来3月号
2020/10/14 月詠
工場の屋根のカラスが散っていく向かいのカフェでみんな見ていた
相談をもちかけながらこわくないようになんでもないように言う
水堀のほとんど動かない水をホテルの上から撮っている人
後輩を窓に呼んだらやってきて去年の花火を教えてくれた
2021年未来1月号
2020/09/01 月詠
きみだって負けないはずさ 学生はそのうち帰ってゆく風物詩
自転車の段差の感じを覚えてる角の銭湯がなくなるらしい
車屋の大きな窓に応接のテーブルがあり椅子は一脚
暗くなり電気をつけた店を出てわずかに冷えた腕で帰った
2020年未来12月号
2020/08/15 月詠
みずうみに電車で行った やまひとつ抜けた暗さは覚えていない
Slackに海の浅瀬が光ってて35秒で終わってしまう
隅々へ正午を告げる放送とノイズがここもあったらしいね
海際で太鼓を叩くひとがいて思ってたより遠かった宿
暗くしてわたしの部屋がうれしくて鳩を見たって話はしたか
2020年未来11月号