2020/10/14 月詠

工場の屋根のカラスが散っていく向かいのカフェでみんな見ていた

相談をもちかけながらこわくないようになんでもないように言う

水堀のほとんど動かない水をホテルの上から撮っている人

後輩を窓に呼んだらやってきて去年の花火を教えてくれた

 

2021年未来1月号

2020/09/01 月詠

きみだって負けないはずさ 学生はそのうち帰ってゆく風物詩

自転車の段差の感じを覚えてる角の銭湯がなくなるらしい

車屋の大きな窓に応接のテーブルがあり椅子は一脚

暗くなり電気をつけた店を出てわずかに冷えた腕で帰った

 

2020年未来12月号

2020/08/15 月詠

みずうみに電車で行った やまひとつ抜けた暗さは覚えていない

Slackに海の浅瀬が光ってて35秒で終わってしまう

隅々へ正午を告げる放送とノイズがここもあったらしいね

海際で太鼓を叩くひとがいて思ってたより遠かった宿

暗くしてわたしの部屋がうれしくて鳩を見たって話はしたか

 

2020年未来11月号

2020/07/11 月詠

クレーンが対岸の辺にかたむいてむかし丸太があふれたらしい

空き地から工事車両がゆっくりと曲がっていってその後を行く

改札の流れを横に行きたくて茎が斜めの水草のよう

 

2020年未来10月号