2017/09/21 月詠

いりくんだ薔薇の落とした影のなか夕方になる時間をはかる
気がつけば空き地になっていた家をすぎゆきざまにすすきが騒ぐ
山と山のあいだに雲はくらがりをもたらしていく日の入りまでを
散らばった髪束を掃く美容師に子犬のようなうずくまる黒
おろかでもおりあってよね建物を水の流れる音が聞こえる
海と川の橋を間違う 桂男を眺めるように目はまぶしくて
幾本も花糸のでたはなびらに照れるけどともだちは大事ね
九つのころに毛虫が落ちてきた 首の根元をあたためてみる
ならんだら狭い歩道をにじみあいあとは思想の話をしよう
樹林から急にひらけて声冴える青や黄色の葉の裏通り

 

月詠。ひと月に一度の締切がやってくる制度はそこそこ合ってた。
未来2018年1月号